アクティブラーニングは、単に「能動的な学び」と称されることがありますが、正しくは「一方的な知識伝達型で講義を聴く(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習」(京都大学高等教育研究開発推進センター教授 溝上慎一)を意味しています。さらに「能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う」ものでもあります。
産業能率大学出版部が送る「アクティブラーニング」に関する書籍は、教室内外でのアクティブラーニングによる学びでどのように学生や生徒は成長していくかについて先進的な理論と実践例を基にお伝えしていきます。
『物理が得意になるためには、演習を行って頭をそれぞれの単元に慣らしていけば良い』『それなのに、概念が理解できておらず、演習を自力で行うところまで辿り着かない生徒が多い』『私が授業で1~10まで説明しても、初学者である生徒が理解できるのは3くらいまで』
『理解した3の中にも、思い違いがたくさん含まれているようだ』『それでも、4~10の説明を省くのはなんだか怖い』
このようなところで悩んでいた頃に、アクティブラーニングの研修を受講しました。定義や法則の説明があまりに簡潔で驚きました。そこで、私の場合、10まで説明していたのは、「全部説明したのだから私は責任を果たした」と思いたいという気持ちからだったのかもしれないと気が付きました。生徒のためではなくて自分のためだったかもしれない、ということです。説明が上手なベテランの先生であれば、10まで説明しても良いのかもしれませんが、私はそうではありません。
いたく反省をし、「教えきること」ではなく「初学者である生徒が理解すること」を目標として授業を組み立てることに意識を置こうと誓い、見よう見まねでアクティブラーニング型の授業を始めてみました。
演習の時間に出てきた質問に、つい答えてしまった点。友達と協力してあの手この手で問題を解決していく、というのがアクティブラーニング型の授業の醍醐味であるのに、先生に聞けば何とかなるのだという気持ちにさせてしまいました。迂闊なことでした。アクティブラーニング型の授業を行うのであれば、生徒同士で解決させるという点は徹底させるべきだと痛感しました。
[成果]居眠りをする生徒がいなくなったこと、物理が楽しいと多くの生徒に言ってもらえるようになったこと、小テストで0点ばかりだった生徒が満点を取るようになったことです。
[目標]今はひとまず物理の内容をより良く理解させるという点のみに意識を置いてAL型授業をしていますが、今後、生徒間のつながりを作ったり問題解決の手法を学ばせたりするための手法として活用していきたいです。
前任校は、小論文委員会を組織し学校独自テキスト『唸らせる小論文』を作成するなど、小論文指導に早期に取り組んだことで全国的にも知られた学校でした。小論文の授業はといえば、授業時間に生徒に書かせた文章を教員が点検し添削するという形式が多くなり、当然、生徒の小論文答案を添削する教員の負担は重く、現実的には検印をついて返すのが精一杯でした。また、答案の中には、力作ばかりではなく意欲を疑うものも散見し、教員の負担軽減と生徒の意欲喚起が課題であると感じていました。そんな折、三重に学校訪問をする機会を得て鈴木達哉先生や岩佐純巨先生から大いに刺激を受け、キャリア教育や協同学習の観点から小論文学習を見直すことが出来ないかと考えるようになりました。その後、さまざまな講演や公開授業、小林昭文先生の研修などの影響を受け、当時の進路指導主事であった千葉貢先生から様々な助言をいただきながら現在のスタイルを確立しました。
宿題を出さずに怒られがちの生徒が「家で書いたんですけど、まだ満足できないので書き直したい。」と職員室に原稿用紙をもらいにきました。「私の答案がなぜ他グループの評価で点が入らなかったのか教えて下さい。」と職員室に相談に来る生徒があらわれました。無気力答案もだいぶ減りました。生徒の感想を見ても「これなら小論文力があがる気がする」「頭が良くなっていく気がする」「先生の添削より他グループから0点をつけられる方がへこむ」など意欲喚起がうまく行っているように感じています。なにより、添削や授業案の立案、授業前打ち合わせによる教員の負担も軽減され、他の先生方も机間巡視をしながら生徒の議論に介入したりアイデアを提供したりするだけなので、負担なく参加してもらえるようになりました。
アクティブラーニングは全教員に必須です。本書は実践者向け実用書であり、特に多方面からの情報収集により実現した「全国の新進気鋭32名の授業レポート」、秀逸の実践的個人研究、振り返りに特化した考察などは類書の追随を許さないものだと確信します。産業能率大学主催「キャリア教育推進フォーラム」8年間の集大成でもあります。本書から実践を学び、組織的な授業改革を実現してほしいと思います。
(溝上慎一先生 推薦の言葉より)
21世紀型の資質・能力を育てるためには、活動を実社会や実生活の課題に繋げて取り組ませる、「活用」と「探究」といった学習の型でのアクティブラーニングが求められる。
アクティブラーニングは、特定の型や技法・戦略を提示する概念ではない。であるがゆえに、実践的なアクティブラーニングの取り組みが画一的なものになるはずはないし、そうなってはならない。本書で紹介される事例は、この視点を十分に理解して読まなければならない。
前作の『アクティブラーニング入門』の続巻。「主体的・対話的で深い学びの実現」を目指す皆さんの力になります。 特に、授業改善に必要な戦略とスキルに重点を置いたユニークな解説は、これから挑戦する人にも、挑戦してはいるものの壁にぶつかっている人たちにも、おおいに役立つでしょう。 本書は、全ての校種、教科科目、授業方式を超えて役立ちます。
わかりやすく、現場で役立つと評判のアクティブラーニング入門シリーズの第3弾。 小中高校はもとより、大学・短大・専門学校・高専など授業時間が長い学校で使える工夫も満載です。管理職や授業改善リーダーの皆さんには根底にある考え方やリーダーシップ発揮の方法も役立ちます。
教科科目の授業の質的改善なしには「総合的な探究の時間」の実質的な成功はあり得ません。
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